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第16話 好きになる瞬間なんて、自分では分からない

last update publish date: 2026-09-22 15:27:16

第16話 好きになる瞬間なんて、自分では分からない

 神崎先輩がホワイトボードに大きく書いた文字を見た瞬間、俺は帰りたくなった。

『誰かを好きになるのは、どの瞬間からなのか』

 今日に限って、テーマが妙に重い。

「先輩」

「何?」

「もっとどうでもいい話に戻しません?」

「どうでもいい話って何」

「袖をまくる仕草とか」

「あれも大事な研究だけど」

「今の百倍楽です」

 俺がそう言うと、隣に座っていた陽菜が小さく頷いた。

「今日は悠真に賛成」

「珍しいな」

「だってこれ、答えにくいじゃん」

「陽菜ちゃんも?」

 神崎先輩が楽しそうに振り返る。

「普通に難しくないですか?」

「難しいから面白いんだよ」

「大学の先生みたいなこと言い始めた」

「一応大学生だからね」

「学生側じゃないですか」

 澪先輩はいつもの窓際でノートを開いていた。

 今日は千紗までいる。

 アルバイトが休みらしく、陽菜に半ば強引に連れてこられたらしい。

「私は面白いと思うけど」

 千紗が言う。

「でしょ?」

 神崎先輩がすぐ味方を得た顔になる。

「水野さん、やっぱり入らない?」

「入りません」

「即答」

「外から見てる
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